子どものインフルエンザとタミフル・ドライシロップ
予想どおり2月ともなると、外来は急にインフルエンザの患者さんが増えてきました。インフルエンザは特に治療しなくても、5日もすればさしもの高熱も下がりますが、でも5日間の高熱はかなりの苦痛ですし、体も弱るので中耳炎や肺炎などの余病にかかりやすくなります。
ところが抗インフルエンザ剤のタミフルが出現してからは、この薬によって2日以内で熱を下げてしまうことができるようになりました。ただし、この特効薬も使うのにいろいろ条件があります。
タミフル・ドライシロップ
子どものインフルエンザの治療の中心は、最近ではもっぱらタミフル・ドライシロップ(DSと略す)でしょう。子ども用に味をつけてあるので、それほど飲みにくい薬ではありませんし、なによりも効果抜群なのです。
ただし、タミフルはA型でもB型でもかまいませんが、インフルエンザにしか効きません。インフルエンザに似た、高熱が何日も続く病気がほかにもいくつかありますが、それらにはまったく効かないのです。
赤ちゃんに飲ませるには問題がありますが
米国で、赤ちゃんラットにタミフルを大量投与したところ、死亡したラットがいたという実験結果から、2004年1月に「1歳未満の乳児にはタミフル使用をひかえるように」という米国医師会の通達が出て、それまでインフルエンザの乳児にタミフルを喜んで使っていた日本の小児科医は困りました。
そこで日本の小児科医会で乳児のタミフル使用例を集めて検討した結果、下痢や嘔吐がわずかに見られた位で、重い副作用は見られなかったため、「インフルエンザ罹患乳児に対するタミフルDSの使用は、規定の使い方を守る限り、危険性は高くないと思われる。」という意見をとりあえず出しています。
注意はいりますが、赤ちゃんにも
結局、このような結論や、自分の経験(インフルエンザ自体の恐ろしさやタミフルDSの有用性)から考えて、「おかしいと思ったら、5日飲み続けることにこだわらず、中止して相談するように」と注意して、赤ちゃんにもタミフルDSを処方される先生は多いと思います。私もその一人で、いざとなったら、注意しながら使った方が良いと思っています。特に9ヶ月以降は余り心配ないようです。
タミフル治療は発病後48時間以内にスタート
タミフルDS出現のおかげで、5日ほど続くインフルエンザの高熱が2〜3日で済むようになりました。しかしタミフルは、インフルエンザウイルスが体内で増えないように抑えるのが仕事で、増えたウイルスを殺すことはできません。だから、ある程度以上ウイルスが増えてから飲んだのでは役に立ちません。
そのため、タミフルは発病(発熱と考えてよい)後48時間以内に飲み始めることが必要です。
タミフル治療にはインフルエンザの確認が前提
タミフルはインフルエンザにしか効きませんので、使う前にこの熱がインフルエンザのせいかどうか確かめる必要があります。この確認のためには、「インフルエンザ抗原迅速試験」が大活躍しています。患者さんの鼻の奥から検体を採って、使い捨ての簡単な器具で調べるのですが、外来でできて、しかも10分前後で結果が出ます。これで「陽性」といわれたら、まず間違いなくインフルエンザだといえます。
迅速試験陰性でもインフルエンザでないとは限らない
逆に迅速試験が陰性ならインフルエンザでない、ということになる筈ですが、それがそうとも限らないのです。問題は要するにウイルスがいても数が少ないと結果が陽性に出ないということです。
ひとつは検体の採り方です。普通、細い綿棒を鼻の奥深くまで入れて採取するのですが、鼻の中が腫れていたり、子どもが暴れたりして危なくて奥まで入れられなかった場合、あるいはのどの奥から採取した場合は、十分な量の検体が採れず、結果が陰性に出てしまうことがあります。
二つ目の問題はインフルエンザという病気はウイルスがあまり増えない内から高熱が出るということです。そのため発病当日の検査では、まだウイルスが少なくて、しばしば陰性の結果が出てしまうことがあります。
受診は発病12時間後で48時間以内がおすすめ
タミフルはなるべく早く飲み始めた方がよいというわけで、「高熱だ、ソレ」っとばかり夜間病院を受診した場合などで、もし「インフルエンザではないようです。」といわれても、前項の二つ目の問題がありますので、おかしいとおもったら、次の日ぜひ病院にいって調べなおしてください。次の朝には、もう検査が陽性に変わっていることをよく経験しますので、発病12時間後の検査結果なら信用できると思います。
検査のためには発病12時間後で、タミフルのためには48時間以内が都合よいということですから、その間わずか1日半です。発熱以外の重大な症状がなければ、インフルエンザの受診には時間的な要領よさが要求されます。
タミフルは5日飲むのが原則
タミフルはインフルエンザウイルスが増えないように抑えているだけですから、熱が下がったといって飲むのを止めてしまうと、すぐまた増え始めて熱が出てしまいます。
インフルエンザは発病から5日を過ぎるころ免疫体ができてウイルスを殺してくれます。だから5日以後はもうタミフルで抑えていなくてもよい訳です。
そういう訳で、お医者さんはタミフルDSを5日分セットで処方してくれるのが普通ですが、この5日分は熱が下がっても全部飲まなくてはなりません。
熱が下がっても2日間は登園禁止
タミフルDSを飲み始めると、早い時には2日目で熱が下がってしまいますが、熱が無いからといって早速幼稚園や保育園に出しては困ります。迅速試験で試してみると熱が下がって1日たっても約80%、2日たっても約40%の子どもたちが陽性になる、すなわち、まだインフルエンザをうつす可能性があるのです。3日たつと10%に減るので、もう大抵大丈夫だろうと解釈して、インフルエンザにかかったら熱の無い日が少なくとも2日続くのを確かめてから登園させる約束になっていることを覚えておいてください。
インフルエンザ脳症は一刻を争う
幼児のインフルエンザで特に恐ろしいのは脳症です。発熱と同時から次の日にかけて発病することがほとんどなので、タミフルも力を発揮するひまがありません。インフルエンザの迅速試験も、まだ陽性が出ないことがよくあります。インフルエンザのはやっている時で、急な高熱の際、ひきつけを繰り返す、ひきつけが終わったのに目が覚めない、ひきつけないが目を覚まさない、目は覚めているが、変なことをしゃべったり、したりする場合は、脳症と考えて一刻も早く病院で受診してください。
(2006年2月15日 小児科医・高下泰三 〜「札幌南区子育てガイドPEEK-A-BOO(ピーカブー)」より)
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